このブログ記事では、ビジョントレーニング用の端末アプリについて整理しました。すでに導入している方、導入を検討している方、これから情報収集を始める方にも、参考にしていただける内容です。
こんにちは。
ビジョントレーニング育成講師の田村です。
ビジョントレーニング用の端末アプリは、手軽で魅力的なツールです。一方で、神経発達症を持つ子供を対象とする場合には、慎重な評価が欠かせません。視覚機能に大きな問題のない健常者では効果が期待できる一方、発達障害やグレーゾーンの子供に対して、評価や改善を行わずに向上のみを目指すと、逆効果になる場合があります。
画面の小ささ、平面情報、身体との連動不足などの特性を理解し、他の支援方法と組み合わせて活用する視点が、発達支援や特別支援の現場では重要になります。
■ はじめに:増え続けるビジョントレーニング用アプリ
近年、ビジョントレーニングを目的とした端末アプリが数多く紹介されています。スマートフォンやタブレット、パソコンを使い、手軽に取り組める点が特徴です。発達支援や特別支援の現場でも、導入を検討する声を耳にする機会が増えました。
しかし、「本当に神経発達症の子供たちに効果があるのか」この問いに対しては、冷静に整理して考える必要があります。

■ ビジョントレーニングと端末アプリの基本的な関係
ビジョントレーニングとは、視覚機能を適切に働かせるためのトレーニングです。眼球運動、焦点調節、両眼視、視野認知などが主な対象になります。端末アプリは、特定の視覚機能を集中的に刺激できる点で優れています。条件が合えば、効率よく機能向上を促すことも可能です。
私のこれまでの経験では、視覚機能に大きな問題のない健常者の場合、年齢やレベルに関係なく、端末アプリによるビジョントレーニングは有効です。トップアスリートが、特定の視覚機能向上を目的に活用する例もあります。トレーニング前後で数値が10~30%向上することも、決して珍しくありません。目的が明確で、基礎機能が整っている場合には、高い効果が期待できます。
■ 神経発達症の子供にそのまま適用できない理由
一方で、神経発達症を持つ子供たちには、同じ考え方は通用しません。発達障害、ADHD、LD、DCD、グレーゾーンの子供には、それぞれ個別性があります。視覚機能そのものが未成熟だったり、機能間のバランスが崩れていたりするケースが多いためです。そのため、向上を目指す前に、状態の確認と調整が欠かせません。
神経発達症のビジョントレーニングで最も重要なのは「順序」です。最初に行うべきは、状態の確認、つまり評価(アセスメント)です。次に、問題が見つかった場合の改善や賦活、コンディショニングを行います。機能が整ってはじめて、向上のトレーニングが意味を持ちます。確認や改善を省いて向上だけを行っても、効果は期待できません。
■ 不適切な負荷がもたらすリスク
端末アプリは刺激が明確で、負荷も一定以上になります。状態を把握しないまま使用すると、負担が過剰になることがあります。その結果、疲労感、集中力の低下、行動面の不安定さが表れることもあります。改善どころか、状態を悪化させる可能性も否定できません。神経発達症の支援では、最初に必要なのは「評価」と「改善」であり、慎重な判断が求められます。
■ 端末アプリ特有の4つの課題
端末アプリには、神経発達症の子供にとって見過ごせない課題があります。これらを理解せずに導入することは避けるべきです。
課題① 画面が小さいという問題
スマートフォンやタブレットの画面は、視野全体から見れば非常に小さな範囲です。日常生活で使う視野は、はるかに広い範囲に及びます。限られた範囲だけを見る習慣は、視野の使い方を偏らせる可能性があります。特に周辺視の弱い子供には注意が必要です。
課題② 平面(2D)情報しか扱えない
端末の画面は平面であり、奥行きや立体感が存在しません。実生活では、距離感や空間認知が重要な役割を果たします。2Dのみの刺激では、立体的な視覚処理は育ちにくいのが現実です。
課題③ 「見るだけ」で終わってしまう
端末アプリの多くは、画面を見ることが中心です。目と手の協調、目と身体の協調にはつながりにくい構造です。神経発達症の支援では、全身を使った体験が欠かせません。
課題④ 静止画の連続による動きの違い
動画は、1秒間に24~60枚の静止画の連続で構成されています。実際に目で追う動きとは性質が異なります。この違いは、視覚処理の学習にも影響すると考えます。
■ 端末アプリのメリットも正しく評価する
もちろん、端末アプリには多くの利点があります。場所を選ばず、一人で取り組める点は大きな魅力です。時間の制約が少なく、継続しやすい点も評価できます。
ただし、端末アプリは単独で万能な方法ではありません。実体験型のビジョントレーニングと組み合わせてこそ、効果を発揮します。評価と改善を行ったうえで、補助的に使うことが理想です。指導者や保護者が目的を共有することも重要になります。

■ 神経発達症への安易な導入に警鐘を鳴らす
神経発達症の子供に対し、課題を理解せずに導入するのは慎むべきです。「手軽だから」「流行っているから」という理由だけでは不十分です。発達支援や特別支援の現場では、根拠と配慮に基づいた判断が求められます。常に子供の状態を最優先に考える姿勢が不可欠です。
近年、治療目的のデジタルアプリの開発も進んでいます。ADHDを対象としたデジタル治療用アプリの承認例も出てきました。これらは医療的評価を経たものであり、一般的なトレーニングアプリとは同列には扱えません。
■ まとめ:端末アプリは「使い方」がすべて
ビジョントレーニング用の端末アプリを否定する必要はありません。しかし、神経発達症の子供を対象とする場合には、慎重な検討が欠かせません。評価、改善、向上という順序を守ることが大前提です。指導者、教職員、保護者が共通理解を持つことが重要です。子供の発達発育を支える視点を、常に忘れないようにしましょう。
※この記事は、情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や助言を行うものではありません。必要に応じて、医師や専門家にご相談ください。
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