力は数ある視覚機能の一つでありながら、他の「見る力」を支える重要な基盤です。視力は出生後から発達し、5歳前後でほぼ完成します。その後に発達する視覚機能や脳神経系の成熟には、適正な視力が欠かせません。
こんにちは、アイブレイン塾の田村です。
発達支援を必要とする子供たちには視覚機能の問題が多く見られますが、学校検診のABCD判定では視力低下が見逃されがちです。ビジョントレーニングの前に、視力の確認と適切な視力矯正を行うことが、発達支援の第一歩となることを説明します。
■視力は数ある視覚機能の一つであり、同時に土台である
視力(正式には静止視力、ここでは視力とする)は、数多く存在する視覚機能の一つです。同時に、他の全ての「見る力」を支える最も重要な基盤でもあります。物を見る、形を捉える、文字を読むといった活動は、視力が前提です。私は長年、ビジョントレーナー育成講師として活動してきました。その経験から、視力の重要性が軽視されている現状を強く感じています。
■視力は最初に発達する視覚機能
視覚機能の中で、最も早く発達するのが視力です。出生後から発達を始め、5歳前後で1.0程度に達すると言われています。この時期に視力が安定することで、次の発達段階へ進む準備が整います。つまり、視力は視覚発達のスタートラインなのです。この基盤が不十分なままでは、後の発達にも影響が及びます。
■他の視覚機能は視力の発達を待って育つ
眼球運動、両眼視、視覚認知などの視覚機能は、視力の後から発達します。それらは、視力がある程度整ってから育つと考えられています。視力が不十分な状態では、正確な視覚経験が難しくなります。その結果、視覚機能全体の発達が遅れたり偏ったりすることが危惧されます。視力は、他の視覚機能の発達を支える前提条件です。発達発育の土台として視力の重要性は非常に高いのです。
■視力を確認せずに行うビジョントレーニングの問題点
視力が適正でない状態でビジョントレーニングを行うとどうなるでしょうか?これは、本末転倒になりかねません。ピントが合わない状態で課題に取り組んでも、効果は限定的です。むしろ、子供に過度な負担を与える可能性もあります。トレーニング以前に、まず環境を整えることが重要です。まず整えるべきは視力であり、その次にトレーニングがあります。視力の確認と視力矯正は、ビジョントレーニンを活かした支援の出発点として欠かせません。
■視覚機能と脳神経系の発達は密接に関係する
視覚機能は、小中高生の時期を通して18歳前後まで発達を続けてピークを迎えることが分かっています。この時期は、脳神経系が大きく成熟する時期と重なります。見る経験は、脳を育てる重要な刺激です。視覚から入る情報は、脳の成長に大きな影響を与えます。適正な視力は、正確で豊かな視覚情報を脳へ届けるために不可欠です。その積み重ねが、学習や行動、認知の基盤を形成します。

■発達支援を必要とする子供と視覚機能の課題
神経発達症(発達障害、学習障害など)の症状のある子供たち。いわゆるグレーゾーンと呼ばれる子供たちも含め、視覚機能の問題は多く見られます。にもかかわらず、視力の未矯正や左右差が見逃されている例は少なくありません。発達支援において、視覚機能への配慮は欠かせない視点だと考えます。
■学校検診とABCD判定の落とし穴
学校の視力検診に、ABCD判定が導入されて30年以上が経ちました。
・A判定: 視力1.0以上(問題なし)
・B判定: 視力0.7~0.9(学校生活に支障は少ないが、低下傾向)
・C判定: 視力0.3~0.6(教室の授業に多少影響、対策が必要)
・D判定: 視力0.2以下(黒板の字が見えにくい、早急な対策が必要)
数値評価からランク評価へ変わりましたが、このランクの意味が十分に共有されているとは言えず問題もあります。Aは1.0以上、Bは0.7~0.9とされています。しかし、AとBでは、この差の意味は十分に理解されていません。B判定でも「問題なし」と受け取られることが多いのが現状です。その結果、視力低下が放置されやすくなっています。
■数値評価が持っていた「気づきの力」
かつては、視力を数値で評価していました。1.5が1.0、0.7と下がればすぐに眼科を受診する意識が働きました。数値の変化は、危機感を生みやすかったのでしょう。しかし、AからBへの変化では、深刻さが伝わりにくくなります。私の経験では、B判定は「まだ大丈夫」と判断され、放置されやすい傾向があります。その間に、視覚機能の発達は影響を受け続けますし、視力低下が進行することもあります。
■現場で視力まで配慮するのは難しい?
発達支援や特別支援の現場は多忙です。視力まで確認する余裕はないと感じる方も多いでしょう。しかし、子供は「よく見えない」と自ら訴えることはほとんどありません。その判断基準をまだ持っていないのです。目を細める、顔を近づける、姿勢が崩れるなどの行動がヒントです。そうした小さなサインを見逃さないことが重要です。保護者を含め、日常の様子から気づくことが大切です。

■簡易的な視力確認と専門機関への連携
視力検査表があれば、簡単な確認は可能です。(ネットでダウンロードできるものもあります。)明らかな左右差や低下があれば、保護者に伝えましょう。眼科での精密検査につなぐことが大切です。必要に応じて、眼鏡などの視力矯正や治療が行われます。保護者、専門家との連携は、発達支援の質を高めるはずです。
■適正な視力とは「両眼ともに1.0以上」
私は、矯正視力を含め両眼ともに1.0以上が適正な視力だと思います。それは、正確に焦点を合わせて黒板の文字を見るためだけではありません。他の視覚機能の発達を促すためでもあります。さらに、脳の発達を支えるための重要な条件です。視力は、発達支援の土台となる要素だと考えます。眼科医の精密検査を受け、必要なら適正に矯正することが大事です。
■まとめ:視力を整えることは発達支援の第一歩
ビジョントレーニングは、発達支援において有効な方法です。しかし、その前提として視力の確認が欠かせません。見る力の基盤を整えることが、支援の質を高めます。指導者、教職員、保護者が同じ認識を持つことが重要です。それが、子供たちの発達発育を支える力になると信じます。
※この記事は、情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。
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