注意欠如・多動症(ADHD)と「見る力」の関係

注意欠如・多動症(ADHD)と「見る力」の関係とは? 「集中できない」をビジョントレーニングで支援する

注意欠如・多動症(ADHD)は、不注意(集中力が続かない、忘れ物が多いなど)、多動性(落ち着きがない)、衝動性(順番を待てない、思いつきで行動するなど)を主な特徴とする神経発達症です。これらの特性は行動面に注目されやすい一方で、実は「見る力(視覚機能)」との深い関係があることは、あまり知られていません。

視力検査で異常がなくても、眼球運動や視覚情報の処理が苦手なことで、集中力の低下や学習面での困難が生じるケースは少なくありません。私はこれまで、ビジョントレーニングの専門家として、ADHDの特性と「見る力」のつまずきが重なり合っている子どもたちを数多く見てきました。

こんにちは、アイブレイン塾の田村です。

このブログ記事では、ADHDと「見る力」の関係を、発達支援の視点から整理します。視覚的注意、情報の取捨選択、中心視野と周辺視野の切り替えといった要素に触れながら、現場で役立つ支援の考え方や、ビジョントレーニングの位置づけについてお伝えします。指導者、教職員、保護者の皆さんにとって、支援の視野を広げる一助となれば幸いです。

注意欠如・多動症(ADHD)と「見る力」の関係


■はじめに:ADHDと「見る力」の関連性

ADHDというと、「落ち着きがない」「集中できない」といった行動面の課題が強調されがちです。しかし、その行動の背景には、視覚情報をうまく受け取り、整理し、活用することの難しさが隠れている場合があります。「見る力」とは、単に視力が良いかどうかではありません。目で情報を捉え、脳で処理し、行動や学習につなげる一連の力を指します。ADHDのある子どもたちは、この視覚情報処理の過程で負荷がかかりやすく、その結果として不注意や集中力の低下が表面化すると考えられます。


■視力が良くても「見るべきものが見えていない」ことがある

学校や家庭では、視力に問題がなければ「ちゃんと見えている」と判断されがちです。しかし実際には、「見えているのに分からない」「見ているのに追えない」といった状態が多く見られます。これは視覚機能の未熟さによって起こる、典型的な困りごとです。

ここでは、ADHDと関連しやすい三つの視覚的要因について整理してみます。

1)眼球運動のコントロールの難しさ

ADHDの子どもは、眼球運動が不安定になりやすい傾向があります。特に影響を受けやすいのが、次の二つの動きです。

・追従性眼球運動:動くものを滑らかに追い続ける力
・跳躍性眼球運動:視線を素早く正確に移動させる力

これらが弱いと、読書中に行を飛ばす、板書を写すのに時間がかかる、文章を読んでも内容が頭に入りにくいといった困難が生じます。集中力の問題に見える行動も、実際には視線が安定せず、情報を正確に捉えられていないことが原因の場合があります。学習障害(限局性学習症、SLD/LD)を併発している場合、こうした傾向はさらに顕著になるでしょう。

2)不注意特性と視覚的注意の難しさ

ADHDの不注意特性は、視覚情報処理にも影響を与えます。文字や図形、状況などを見る際に、重要な情報を選び出し、必要な部分に注意を向け続けることが苦手です。その結果、
・板書が途中で分からなくなる
・読んでいるうちに内容を忘れてしまう
・指示の一部だけを取りこぼす
といった場面が起こりやすくなります。
これらは、目に入る多くの情報の中から必要なものを取捨選択し、注意を持続・切り替えする「視覚的注意」の負荷が大きいためだと考えられます。

3)周辺視野と中心視野の切り替えの難しさ

ADHDのある子どもは、視覚刺激が多い環境で疲れやすい傾向があります。その一因が、中心視野で一点に集中する場面と、周辺視野で全体を把握する場面の切り替えがスムーズにいかないことです。その結果、必要な情報を探し出せなかったり、人混みや教室環境で強い疲労感を覚えたりします。「探しているのに見つからない」というマイナスの経験の積み重ねが、自己評価の低下につながる場合もあると思われます。

「集中できない」をビジョントレーニングで支援する


■「見る力」のつまずきが及ぼす影響

見る力に課題があると、次のような困りごとが重なりやすくなります。

・注意の持続や切り替えが難しく、集中が途切れやすい
・情報処理に時間がかかり、作業が遅れやすい
・視覚的記憶が弱く、見た内容を保持しにくい
・複数の情報を同時に扱う場面で混乱しやすい

大切なのは、ADHDの子どもたちが「怠けている」のではない、という理解です。「見ていない」のではなく、「処理しきれない」状態にあることを、支援者や周囲の大人が理解することが重要だと思います。行動を抑える前に、環境や方法を整える視点が求められるのではないでしょうか。


■「見る力」を意識した具体的な支援の工夫

現場でできる支援としては、視覚情報の負荷を減らす工夫が有効です。

・箇条書きや図解、色分けを活用して情報を整理する
・ホワイトボードや掲示物を使い、視覚的に構造化する
・課題や指示を小さなステップに分けて提示する
・不要な刺激を減らし、落ち着いて見られる環境を整える

これらは特別な道具がなくても、すぐに取り入れやすい支援方法だと思います。


■ビジョントレーニングの位置づけと可能性

見る力の弱さに対する一つのアプローチとして、ビジョントレーニングがあります。眼球運動や両眼視機能に働きかけることで、目と脳の連携を高めていきます。すべての子どもに同じ効果が出るわけではありませんが、集中の持続や作業効率の向上につながった例を多く見てきました。医療や教育、環境調整と組み合わせながら、選択肢の一つとして検討してみる価値はあると信じます。


■発達支援に携わる方へ伝えたいこと

ADHDと「見る力」の関係を知ることで、子どもを見る視点は大きく変わります。行動だけに注目するのではなく、その背景にある「見え方」「情報処理の負荷」に目を向けることが、支援の質を高めるはずです。指導者、教職員、保護者が共通理解を持ち、同じ視点で子どもを支えることが大切です。「見る力」という視点が、発達支援の現場で広がっていくことを願っています。

※この記事は、情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や助言を行うものではありません。必要に応じて、医師や専門家にご相談ください。


<オンライン教室のご案内>

アイブレイン塾では、「見る力」を確認・改善・向上するための体系的なビジョントレーニングを学ぶことができるオンライン教室を開催しています。

【発達支援・特別支援】指導者・保護者のためのビジョントレーニング教室

まずは、無料セミナーにご参加ください。「見る力」と子供の発達発育の関連性や基本的なビジョントレーニングの方法が学べます。

『無料お試しセミナー』お申込