自閉スペクトラム症(ASD)と「見る力」の関係性

自閉スペクトラム症(ASD)と「見る力」の関係性とは? 子供たちが抱える多様な「見えにくさ」と支援のヒント

自閉スペクトラム症(ASD)の子供には、視力に問題がなくても「見る力」の使い方に独特の課題が見られることがあります。視線処理の困難さや感覚過敏、眼球運動や視覚認知の弱さは、学習や運動、日常生活における困りごとと深く関係しています。

こんにちは。ビジョントレーナー育成講師の田村です。
これまで多くの指導者や教職員、保護者の方々と関わる中で、「見えているはずなのに、なぜうまくできないのか」という疑問を数多く耳にしてきました。

このブログ記事では、ASDと視覚機能の関係を整理し、「見る力」という視点から、発達支援や特別支援にどのような可能性があるのかをお伝えします。特性理解や環境調整、専門家との連携の重要性にも触れ、現場で活かしやすい考え方をご提案できればと思います。

自閉スペクトラム症(ASD)と「見る力」の関係性


■自閉スペクトラム症(ASD)とは?

自閉スペクトラム症(ASD)は、対人関係やコミュニケーションの難しさ、強いこだわりや興味の偏りを特徴とする神経発達症です。従来の自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害などを含む広い概念としての名称です。原因は先天的な脳の発達の偏りによるものと考えられており、育て方や家庭環境が直接の原因ではありません。特性の現れ方には大きな個人差があり、その子に合った理解が求められます。


■ASDの特性と視覚機能の関係

ASDの子供は、視力検査では問題がなくても、視覚情報の受け取り方や使い方に特徴が見られることがあります。その結果、学習や集団活動、日常生活で困りごとが生じやすくなります。また、診断に至らないグレーゾーンの子供にも、同様の視覚的な困難が見られることがあります。だからこそ、診断名よりも「具体的に何に困っているのか」を丁寧に捉える視点が重要だと感じています。

1)視線・注視に関する特徴

ASDの子供の中には、他者と目を合わせることが難しいケースがあります。これは関心や意欲の問題ではなく、視線を合わせる処理自体が大きな負担になっている場合が少なくありません。特に顔の中でも「目」の情報処理が難しく、表情理解につながりにくいことがあります。このことが、対人コミュニケーションの難しさとして表面化することもあります。

2)感覚過敏・鈍麻と視覚機能

まぶしさや光への過敏さを示す子供も多く、教室の照明や太陽光が強いストレスになる場合があります。明暗への適応が苦手なため、集中力の低下や疲労につながることもあります。一方で、視覚刺激に気づきにくい「鈍麻」の傾向を持つ子供もおり、その特性は非常に多様です。一人ひとりの感じ方を理解する姿勢が欠かせません。

3)周辺視野への依存と全体把握の難しさ

中心視野よりも周辺視野を多く使う傾向が見られる場合、動きには敏感でも、全体像の把握が難しくなります。黒板や教材の情報を断片的に捉え、文脈理解につながりにくいこともあります。細部への強い注目は、強みとして活かせる場面もありますが、学習面では支援が必要になることもあるでしょう。

4)眼球運動の苦手さと学習への影響

追従性眼球運動や跳躍性眼球運動が不安定な場合、読む・書く活動に負担が生じます。行を飛ばす、文字を追いきれない、板書に時間がかかるといった困りごとが見られます。これらが集中力の問題と誤解され、ADHDと混同されるケースも少なくありません。

5)目と手の協調性の課題

目で見た情報をもとに身体を動かす「目と手の協調」は、学習や生活動作の土台となる力です。書字や箸の使用、ボタンかけが苦手な場合、視覚と身体の連携が影響していることがあります。単なる不器用さと決めつけず、背景にある視覚機能に目を向けることが大切です。


■ASDとADHDの併存にも注目

ASDとADHDは併存することが多く、注意の持続や衝動性の課題が重なる場合があります。視覚情報の処理負荷が高いことで、集中が続かないケースも見られます。「見る力」という視点を加え、ビジョントレーニングを導入することで、支援の選択肢が広がる可能性があると思います。

自閉スペクトラム症(ASD)の困りごと


■ビジョントレーニングとは?

ビジョントレーニングは、単なる目の筋力訓練ではありません。眼球運動、両眼の協調、視覚と身体の連携、認知や記憶を含めた「見る力」を育てるアプローチです。遊び感覚で取り入れられる点も、子供にとって大きな利点となります。


■ASDの子供に期待される効果

視覚情報をもとに身体を動かす経験は、学習と運動の基盤を整えます。成功体験を積みやすく、自己肯定感の向上にもつながります。学習面では読み書きの安定、運動面では活動への参加意欲、生活面では身支度のスムーズさ、などが期待できます。


■指導者・教職員・保護者に大切な視点

目指すべきは、特性を「直す」ことではなく、その子の見え方を理解し、環境調整と「見る力」の支援を組み合わせることが重要です。

1)適切なアセスメントの重要性

まずは「どこに負担がかかっているのか」を見極めることが欠かせません。多様なASDの視覚的な特徴の中から、最初にその子の「見る力」の課題を見つけてあげることが求められます。

2)環境調整との併用

照明の工夫、教材の配置、情報量の調整など、環境面の配慮は、すぐに取り組める有効な支援です。ビジョントレーニングと並行することで、負担を軽減でき、本人が安心して取り組めます。

3)専門家との連携

ASDの視覚的な特徴は多様で個人差も大きく、無理な取り組みは逆効果になることもあります。必要に応じて、医師や専門家につなぐ判断が大切です。


■まとめ:「見る力」から広がる発達支援

ASDの困りごとの背景には、視覚機能の特性が関わっていることがあります。「見る力」という視点を持つことで、発達支援や特別支援の可能性は大きく広がるはずです。ASDの子供たち一人ひとりの特性を尊重し、丁寧な支援を積み重ねていきたいものですね。


※この記事は、情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や助言を行うものではありません。必要に応じて、医師や専門家にご相談ください。

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