こんにちは、アイブレイン塾の田村です。
このブログ記事では、人間の視野を構成する「中心視」と「周辺視」に着目し、神経発達症との関連性について解説します。中心視は細部の識別を、周辺視は空間や動きの把握を担い、両者のバランスがとても重要です。
神経発達症のある子供では、どちらか一方に偏った使い方が見られることがあり、学習や対人関係、姿勢制御などに影響する場合があります。診断名にとらわれず、「その子がどう見ているか?」という視点を持つことが、支援の質を高めると私は考えています。この記事では、発達支援に携わる指導者、教職員、保護者の方に向けて、具体的な支援の視点や環境調整の考え方をご紹介します。
■ はじめに|「見る力」を分解して考える意義
発達支援の現場では、「見ているはずなのに理解できていない」と感じる場面に、たびたび出会います。その背景には、視力の問題ではなく、「視覚の使い方」の違いが関係していることがあります。特に重要なのが、「中心視」と「周辺視」という二つの視野の使い分けです。この記事では、神経発達症と視野の特性を結び付けて整理し、日々の支援に活かすための視点をお伝えします。
■ 人間の視野は「中心視」と「周辺視」で成り立っている
人間の視野は、大きく二つの領域に分けて考えると理解しやすくなります。それが、細部を捉える「中心視野(中心視)」と、空間全体を捉える「周辺視野(周辺視)」です。どちらが優れているというものではなく、それぞれに明確な役割があります。私たちは日常生活の中で、この二つを状況に応じて切り替えたり、調整したりしながら使っています。

■ 中心視の役割|細部を正確に識別する力
中心視野は、視野の中心およそ30度以内の領域を指します。特にその中心部分である網膜の中心窩付近は、非常に高い解像度を持っています。文字を読む、色や形を見分ける、表情の細かな変化を捉える場面で活躍します。学習場面では、黒板の文字や教科書の内容を理解するために欠かせない機能です。一方で、中心視を使い続けることは視覚的な負荷が高く、疲労しやすいという特徴もあります。
■ 周辺視の役割|空間と動きを捉える力
周辺視野は、中心視野の外側に広がる領域です。解像度は高くありませんが、動きや明暗、空間の広がりに対して敏感に反応します。人の動きに気づく、周囲の状況を把握する、姿勢やバランスを保つといった役割を担います。歩行や姿勢制御、集団の中での位置取りにも深く関係しています。周辺視は、安全に生活するための「環境を察知する目」と言えるでしょう。
■ 重要なのは「切り替え」と「統合」
結論から言えば、中心視と周辺視のどちらか一方に偏ることは望ましくありません。必要なのは、両方をバランスよく使い、状況に応じて切り替える力です。さらに、それぞれから得られた情報を脳内で統合し、意味づけることが重要になります。この視覚情報の統合がうまくいかないと、行動や理解にズレが生じやすくなります。
■ 神経発達症と視野の使い方の偏り
神経発達症のある子供では、中心視または周辺視のどちらかを多用する傾向が見られることがあります。ただし、これは診断名ごとに単純化できるものではありません。同じASD(自閉スペクトラム症)であっても、視野の使い方には大きな個人差があります。重要なのは、「どの診断か」ではなく、「その子がどのように見ているか」を丁寧に観察する視点です。
一般的に、ASDでは周囲の状況を統合して捉えることが難しく、細部に注意が向きやすいため、中心視に頼る傾向があるとされています。その結果、顔全体の表情や場の雰囲気を読み取ることが難しくなる場合があります。
一方で、中心視に高い負荷を感じやすく、全体や動きを捉える周辺視を多用するケースもあります。この場合、空間全体の刺激に注意が向きやすく、特定の刺激に過敏に反応したり、集中が続きにくくなったりします。
このように視野の使い方は個人差が大きく、決めつけは禁物です。ASDに限らず、他の神経発達症でも同様の視点が必要になります。

■ 中心視に偏った場合に見られやすい困りごと
中心視に依存すると、次のような行動が見られることがあります。
・細部に集中し過ぎて視覚疲労が起こりやすい
・周辺視からの情報が少なく、全体像を把握しにくい
・一部の要素に強く注意が向き、切り替えが難しい
・空間認知が弱く、つまずきや転倒が多くなる
学習障害やグレーゾーンの子供でも、こうした特徴が見られる場合があります。
■ 周辺視に偏った場合に見られやすい困りごと
周辺視への依存が強い場合、次のような行動が見られることがあります。
・正面から物を見ず、横目で確認することが多い
・手を目の前でひらひら動かし、動きを楽しむ
・中心に焦点を合わせにくく、動きなどの刺激に過敏になりやすい
・相手の顔全体を見て感情を読み取ることが苦手
これらは、対人関係や学習理解に影響することも少なくありません。
■ 中心視依存への支援|周辺視を育てる視点
中心視依存への支援では、周辺視の活用を促すアプローチが有効です。周辺視は、トレーニングによって広げたり、精度を高めたりすることが可能です。例えば、周辺視野で色や形を識別するビジョントレーニングがあります。また、歩行中に遠くを見ながら足元も把握する練習も効果的です。視線を意識的に動かすことで、視野全体を使う感覚が育っていきます。
■ 周辺視依存への支援|中心視を活かす工夫
周辺視への依存が強い場合は、中心視を適切に使えるよう支援します。表情理解が難しい場合には、目や口など注目点を明確に示すことが有効です。また、環境調整も重要な支援方法の一つです。学習中に衝立を使うなどして、周辺視野への刺激を減らす工夫が考えられます。視覚情報を整理することで、中心視に集中しやすくなります。
■ 指導者・教職員・保護者に求められる視点
発達支援に携わる立場の方には、「見えているか?」だけでなく、「どう見ているか?」にも目を向けてほしいと思います。行動の背景にある視覚の使い方を理解することが、支援のヒントになります。私たちはつい、子供の行動や態度といった“出力”に注目しがちです。しかし、その土台となる“入力”に目を向ける視点こそが、大切なのではないでしょうか。
■ まとめ|自分自身の「見る癖」にも目を向けて
現代社会では、スマホやパソコンの影響により、誰もが中心視に偏りやすくなっています。健康な目を持っていても、視野の使い方は簡単に偏ってしまうのです。支援者自身が「自分はどう見ているか」を振り返ることも、大切な学びになります。私自身もその一人でした。中心視と周辺視を意識し、バランスよく使うという視点を、ぜひ日々の支援に活かしていきましょう。
※この記事は、情報提供を目的としたものであり、医学的な診断や助言を行うものではありません。必要に応じて、医師や専門家にご相談ください。
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