「見る力」の弱さは、学習、運動、行動、生活全般に影響します。
このブログ記事では、発達支援や特別支援に携わる指導者や教職員、保護者に向けて、「視覚機能と困りごとの関連性」を分かりやすく説明します。発達障害やグレーゾーンの子供たちが抱える課題の背景には、見る力の弱さが潜んでいる場合があります。視覚機能へのアプローチは、困りごとを軽減し、発達を支える大切な手段となり得ます。ビジョントレーニングの重要性と実践のポイントを紹介します。

こんにちは、『アイブレイン塾』代表の田村哲也です。
このブログ記事では、指導者、教職員、保護者の皆さんに押さえておいて欲しい、
・「見る力」と子供の困りごとの関連性
・発達障害と視覚機能の関係
・支援に活かせる視覚アプローチ
の3点を中心に具体例を交えながらご説明し、支援に活かすための視点をお伝えします。
■ はじめに:見る力と子供の困りごとの関連性
発達支援や特別支援の現場では、同じ課題に向き合っていても、子供によって反応やつまずき方が大きく異なるかと思います。その差は、発達の凸凹や発達障害、グレーゾーンの特性だけでは説明しきれないのではないでしょうか?
実はその背後に、見落とされがちでありながら、深く影響しているもう一つの重要な要因があります。それが「見る力」(視覚機能)の発達です。
視覚機能は、読み書き、運動、行動、情緒のコントロール、生活スキルにまで関与します。にもかかわらず、支援施設や学校で十分に理解されていないことが多い領域だと感じています。
視力検査で「問題なし」と言われても、視覚機能に大きな問題がある子供は珍しくありません。視覚機能が弱いと、学習、行動、運動にまで影響が及び、困りごとが増えることがあります。
■ 視覚機能とは何か:単に視力だけでは測れない“見る力”の本質
視覚機能とは、単に視力が良い悪いではなく、「目を使って情報を正確に受け取り、脳で処理し、必要な運動や行動につなげる総合的な能力」です。一般的には視力測定のみで「見えているかどうか」を判断しますが、視覚の発達はもっと多面的です。
● 視覚機能の主な構成要素
- 眼球運動
目をスムーズに動かし、見たいポイントを正確に捉える力です。
読む・書く・運動を行う土台となります。 - 焦点の調節力(ピント合わせ)
遠くと近くを切り替える力です。
黒板を見る → ノートに視線移動、などに影響します。 - 両眼視(両眼の協調)
両目で同じ対象を見る力です。
距離感や立体感の把握に欠かせません。 - 視空間認知
位置、方向、距離、形の違いを認識する力です。
片付けや図形問題、ボール遊びや球技に関係します。 - 視覚記憶
見た情報を短期・長期的に保持する力です。
漢字や語彙の習得、動作の模倣に影響します。
これらの機能のどれかが発達していないと、日常のあらゆる場面で困難が生じやすくなります。
■ 視覚機能の弱さは、どのような困りごとを引き起こすのか?
視力が正常でも、視機能が弱く問題があると、例えば次のような困りごとが起こりやすくなります。
・文字を読むのに時間がかかる、行を読み飛ばす
・漢字を覚えられない、書字のバランスが崩れる
・黒板の字を写すのに時間がかかる
・図形問題が極端に苦手
・ボールの距離感がつかめずキャッチが難しい
・片付けが苦手、「どこに何があるか」が分かりにくい
・姿勢が崩れやすく、机に伏せる
・との距離感をつかみにくい
・落ち着かず、集中が続かず、注意が散りやすい
これらは、発達障害(ADHD・ASD・LD)やグレーゾーンと混同されることが多く、「特性だから仕方ない」と捉えられがちです。しかし、その背後には視覚機能の未発達が潜んでいるケースが少なくありません。
● 読み書きの困難と視覚機能の関係
黒板の字を写すのが極端に遅い子供は、眼球運動がスムーズに働いていないことがあります。視線を移動させるたびに脳が余計なエネルギーを使い、疲れやすく集中が続かなくなります。
● 行動の困りごとと視覚機能
目が安定しないと、空間の把握が苦手になり、落ち着かない行動になることがあります。これは ADHD と誤解されることも多い特徴です。

■ 発達障害と視覚機能の関係:脳の偏りとの関連性
発達障害(ADHD、ASD、LD)は神経発達症とも呼ばれ、脳機能の偏りが原因とされています。近年の研究では、その脳機能の偏りを生むメカニズムに、視覚機能が大きく関与している可能性が高いと指摘されています。
● ADHD(注意欠如多動症)の場合
ADHDの子供は、注意の切り替えや持続が難しく、多動や衝動的な行動が見られます。しかし、その背景に「視線の不安定さ」が存在する場合があります。
・目がキョロキョロ動く
・課題に視線を留めるのが難しい
・文字を追うのに負担が大きい
視線が安定せず目の動きがぎこちないと、脳が処理できる視覚情報の量が減り、その結果として集中の困難や多動傾向が強くなることがあります。つまり、視機能の弱さがADHDの行動を強めている可能性があるのです。
● ASD(自閉スペクトラム症)の場合
ASDの子供は、人の表情や状況を読み取るのが苦手で、対人関係やコミュニケーションに困難を感じることがあります。その背景には、視線の使い方のぎこちなさや、視線のコントロールの難しさ、視覚処理の偏りなどが関係している場合があります。
・表情が読み取りにくい
・特定の刺激だけに注意が偏る
・視覚情報の優先順位づけが苦手
視覚機能の偏りが、社会的に必要な刺激の処理を難しくしていることがあります。また、視覚刺激に過敏な子供(視覚過敏)は、過剰な情報を処理しきれず、行動に影響が出ることがあります。
● LD(学習障害)の場合
LD(学習障害)の子供は、眼球運動や視覚認知・視覚記憶に課題を抱えていることがあります。
・文字が反転して見える
・行が次々にズレる
・書字の乱れや書き写しが極端に苦手
これらは、視覚機能の未発達によるものである場合が多く、ビジョントレーニングによる改善例が多く報告されています。
■ 困りごとの背景に視覚機能がある場合、改善の可能性がある
「発達障害は生まれ持った特性で、根本的な改善や治療はできない」という考え方が長く主流でした。しかし、視覚機能の発達は、刺激や訓練によって変化することが多い領域です。実際に次のような変化が報告されています。
・読み書きの速度が向上した
・姿勢が安定し、集中が続くようになった
・ボール運動が得意になった
・片付けができるようになった
・友だちとのトラブルが減った
もちろん、子供の困りごとがすべて視覚機能だけで説明できるわけではありません。
しかし、「見る力の弱さ」が隠れた原因の一つである場合、アプローチ次第で改善できる可能性があります。
■ ビジョントレーニングが有効な理由:目と脳をつなぐアプローチ
視覚機能の多くは、評価して、改善して、鍛えることができます。その代表的な方法が ビジョントレーニングです。眼球運動・視覚認知・空間認知など複数の要素をバランスよく刺激します。
ビジョントレーニングでは以下を改善できます。
・視線の安定目と身体の協応
・空間認知の向上
・注意力の向上
・読み書きの効率の改善
これらは視覚機能の発達に加え、脳の処理効率を向上させます。「生まれつきだから変わらない」という従来の考えとは異なり、トレーニングによりプラスの変化を生み出す可能性があります。
「見る力が育つ → 困りごとが軽減される」というプロセスは、実践した多くの方々が実際に確認しています。

■ 指導者に持って欲しい視点:視覚機能と支援を結びつける
発達支援の現場で効果を高めるためには、次の視点を意識することが重要だと感じています。
- 行動の背景要因として視覚機能を考える
子供の行動を「特性」とだけ決めつけないで、注意散漫、読み書きの困難、落ち着かなさの裏に視覚の問題がないかを探ってみることがまずは重要です。 - 目の動きや視線の使い方を観察する
視線が泳ぎやすい子は視覚機能の支援が必要なことがほとんどです。
少し注意して観察することで評価できる部分です。 - 環境調整も重要
視覚刺激が多い教室ではASDの子は混乱しやすいです。
落ち着ける場所など“合理的配慮”が必要な場合があります。 - ビジョントレーニングを支援の選択肢に取り入れる
負担の少ない課題から徐々に取り組むことで効果が現れやすいです。
支援に活かせる視覚アプローチとしてビジョントレーニングの導入がおすすめです。
視覚機能と困りごとには確かな関連性があります。支援者がその視点を持ち、保護者とタッグを組むことで、子供の可能性を広げることができると考えています。
■ まとめ:視覚機能を理解し、子供の未来を支えましょう!
視覚機能の弱さは、学習、運動、行動、生活のすべてに広く影響します。視覚機能の理解は、発達支援や特別支援の現場で欠かせない視点なはずです。見る力の課題に気づくことは、子供の困りごとを軽減する大きな一歩になります。
「見る力」の問題は、適切なアセスメントとビジョントレーニングにより変化を生み出せます。指導者が視覚機能と困りごとの関連性に気づくことは、子供の未来を大きく広げます。
ビジョントレーニングは、発達の凸凹を抱えた子供たちを支える有効な方法です。視覚機能へのアプローチを支援に取り入れ、子供の可能性を広げていきませんか?
※この記事は、情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。
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