授業中の音読が苦手

読み書きの苦手さは「見る力」が原因? 学習のつまずきの裏にある“視覚機能”を改善に導くトレーニング方法の考え方

読み飛ばし・字形の崩れ・定規が使えないといった課題には、視覚機能の弱さが関係していることがあります。私はビジョントレーナー育成講師として、多くの支援現場に関わる中で、視覚機能の未発達が学習のつまずきに影響している例を多く見てきました。この記事では、支援者が知っておきたい視覚機能の基礎と、改善のためのビジョントレーニングの考え方を整理してお伝えします。


こんにちは、アイブレイン塾の田村です。
読み書きを中心に学習のつまずきは、周りから目で見て分かり易い部分ですよね。その改善方法として反復練習やプリントを使ったワークなどの導入が一般的かと思うのですが...

言わば出力の問題があれば、出力で改善を図ろうとするもの。でも、原因は入力にあるのかもしれませんよ。どういうことなのか? 整理してお伝えしたいと思います。

授業中の音読が苦手


■はじめに

読み書きに苦手さがある子どもを受け持つと、多くの指導者や教職員は学習障害や発達障害の可能性を考えます。

しかし、私がビジョントレーナー育成講師として現場を見てきた中で、別の原因が隠れているケースを多く目にしてきました。その一つが、目で見た情報を処理する「視覚認知」の弱さです。視覚認知の弱さは、努力不足や不注意ではなく、特性として現れることがあります。

さらに重要なのは、視覚認知の弱さが「視覚機能の未発達」から生じている場合が多い点です。多くの子どもは発達途上にある視覚機能の偏りを抱えています。そして視覚機能が整うことで、視覚認知にもプラスの変化が生まれるケースは少なくありません。

この記事では、発達支援や特別支援に携わる皆さんに押さえておいて欲しい視点をまとめ、実際の支援で役立つ考え方としてお伝えします。


■視覚機能と視覚認知の違いを理解する

効果的な支援を行うためには、「視覚機能」と「視覚認知」の違いを正しく理解する必要があります。

視覚機能とは、眼球運動、ピント調節、視野、焦点合わせの働きを示します。
一方、視覚認知は、見た情報を脳で整理し、意味を理解する力を指します。

発達障害や学習障害の子どもの中には、視覚認知が弱く見えるものの、実際にはその基礎である視覚機能が未発達な例が多くあります。視覚機能が安定しないと入力される情報が不安定になり、脳が正しく処理できません。

そのため、視覚認知だけに注目して支援を行うと、変化が出にくく、結果的に子どもに負担を与えてしまうことがあります。視覚認知を改善するためには、まず視覚機能の土台を整えることが最も重要なポイントになると考えています。

視覚認知機能のトレーニング


■視覚認知が弱い子どもに見られる特徴

視覚認知の弱さは、特別支援や療育の現場でさまざまな形で現れます。
以下は、私が現場でよく見る特徴です。

1.読み飛ばしが多い

行を安定して追うことが難しく、同じ行を繰り返したり抜かしたりします。

2.字形が安定しない

似た字の区別が難しく、書き分けが乱れやすい傾向があります。

3.写し書きの負担が大きい

黒板とノートの視線移動に時間がかかり、作業が遅れやすくなります。

4.図形や空間の理解が苦手

位置関係の把握が難しく、算数や図工でつまずくことがあります。

5.定規やコンパスの操作が困難

視覚と手の協応が乱れ、線が曲がる、位置が合わないなどの問題が生じます。

これらは努力不足ではなく、視覚機能や視覚認知の偏りから起こっているものです。原因を誤解しなければ、子どもを不必要に叱る場面も減らせますね。


■視覚機能が視覚認知に影響する理由

視覚認知の弱さは、イコール、脳の処理能力の問題だと誤解されることがあります。しかし、疾病や外傷による例を除けば、多くの場合は、入力段階である視覚機能の未発達が根本原因となっています。視覚機能が未熟だと、子どもは正確に情報を捉えることができず、脳が混乱して処理が不安定になります。

これは、ピントの合わないカメラで撮影した写真を補正しようとする状況に似ています。どれだけ補正しても、元の画質が悪ければ限界があります。同じように、視覚認知のトレーニングだけをしても成果が出にくいのです。

視覚機能が未発達なときに起こる例

・眼球運動が安定せず、行を追えない
・ピント調節が遅く、板書の見直しに負担がかかる
・視野が狭く、全体を見渡せない
・手と目の協応が弱く、書字が不安定になる

視覚機能を改善すると、入力情報が安定し、視覚認知の働きも自然に整うことがあります。これが、視覚機能の改善が視覚認知に良い影響を与える理由です。


■ビジョントレーニングが注目される理由

視覚機能と視覚認知の関係性を考えると、ビジョントレーニングが注目される背景が見えてくるかと思います。

ビジョントレーニングは、眼球運動やピント調整、視野、協応性などの視覚機能を整える訓練です。視覚機能が安定することで、視覚認知の処理が自然に向上するケースが非常に多くあります。

私自身、読み飛ばしが減った、字形の認識が安定したなどの改善例を数多く見てきました。ここ数年、発達支援や特別支援の現場でも、視覚機能を土台に支援を組み立てる流れが広がっていると感じています。

特に、発達障害や学習障害のグレーゾーンの子どもには、ビジョントレーニングが大きな効果を示すことが多いです。

ビジョントレーニング「焦点の切り替え体操」
Screenshot


■視覚機能トレーニングの基本的な考え方

視覚機能を整えるためには、段階を踏んだトレーニングが必要です。ここでは、ビジョントレーナー育成講師としての視点で、基本をお伝えします。

  1. 眼球運動を整える

読み書きの基本であり、最優先で取り組みたい項目です。
追視(パスート)や跳躍(サッケード)を鍛えることで、行を追う力が安定します。

  1. 焦点調節の訓練

近くと遠くのピント合わせを繰り返す活動は、板書作業の負担軽減に効果的です。

  1. 視野を広げる働きかけ

周辺視野を使った活動を取り入れることで、全体を見通す力が伸び、作業効率も上がります。

  1. 目と手の協応を高める

ボール遊びや細かく手を使う活動が書字動作の安定につながります。

  1. 視覚認知のトレーニングは視覚機能の後に行う

視覚機能が整う前に視覚認知の課題に取り組むと、子どもは疲れやすく成果も出にくいです。認知トレーニングは、視覚機能が基本レベルまで育った後に行うことをおすすめします。


■支援者・教職員・保護者に押さえておいて欲しい視点

視覚認知の弱さは、子どもの努力不足ではありません。視覚機能の未発達により、情報処理が追いついていない可能性があります。だからこそ、反復練習だけを増やす対応は逆効果になりかねません。

視覚機能を理解し、環境を整えることで、子どもの負担は大きく軽減されます。また、家庭と学校、療育が連携することで改善が早まることも多くあります。子どもの小さな変化を見つけ、成功体験を積ませることが何より重要だと考えます。


■まとめ

読み書きのつまずきの背景には、視覚認知の弱さが隠れているケースがあります。そして、視覚認知の弱さは視覚機能の未発達から生じていることが少なくありません。視覚機能を整えることで視覚認知が安定し、学習の負担が軽くなる例も非常に多くあります。

ビジョントレーニングはそのための有効な手段であり、発達支援・特別支援に携わる方にこそ理解してほしい方法です。発達障害・学習障害・グレーゾーンの子どもたちを支えるには、視覚機能と視覚認知の両方を正しく理解する姿勢が不可欠だと考えます。

視覚機能に目を向けて、学校・療育・家庭が協力し、子どもが安心して学び成長できる環境づくりを進めていきませんか?

※この記事は、情報提供のみを目的としています。医学的なアドバイスや診断については、専門家にご相談ください。

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